いよいよ今週末に三重県の鈴鹿サーキットで『シマノ鈴鹿ロード』が開催されます!
1983年、自転車の祭典として誕生したシマノ鈴鹿ロード。
このレースには、私のチームも結成の翌年2001年から毎年参加しています。
「自転車歴数ヶ月」という選手が続々エントリーしているこのレース。
実は、私の初めてのロードレース参戦も『シマノ鈴鹿ロード』だったんです。
積極的にロードレースに参戦していた当時は、必ずレースレポートを書いていました。
その時の気持ちを忘れたくないことと、初めてそのレースに参戦するチームメイトのためにと書き残していました。
実は、シマノ鈴鹿ロード初参戦のレポートは、書いた翌年に雑誌『サイクルスポーツ』に掲載されました。
初めてレースに参加される人の参考になるかどうか分かりませんが、そのレポートをご紹介しようと思います。
雑誌に掲載された内容とは文字数の関係で若干違いますが、ほぼ同内容です。
自転車初心者の時に書いたレポートなので、今読むと恥ずかしくて直したい文面もいっぱいありますが、敢えてそのまま掲載しますね^^;
—– 2001年 夏 —–
■ウエツキチエコ”涙”のレース物語 ~ シマノ鈴鹿ロード初参戦の巻 ~
ロードに乗り始めて約3ヶ月の頃。 (ママチャリ歴、高校3年間の通学のみ。スポーツ経験ほとんどなし。通知簿、体育”2”!) 思えば初めてロードにまたいだ時うまく乗ることもできず、ましてやクリートをはめることもできなかった。そんな未熟者の私は、『シマノ鈴鹿ロード』出場の為に3ヶ月練習に励んできた(こけた回数は限りなく…)。記念すべき、初めてのロードレースの為に…。
いよいよ本番の日がやってきた。私は鈴鹿サーキットレーシングコースを1周(5.864km)する初心者のカテゴリー『ビギナーWB』にエントリーしていた。スタート前、案の定、究極の緊張状態になってきた。明るさだけが取柄の私の顔からも、すっかり笑顔が消えていた。誰に話しかけられても上の空。体も思うように動かなくなっていた。このままでスタートできるんやろか?『ビギナーWB』の召集がかかり列に加わる。「なるべく前に並ばないと!」と、思っていると、運良く2列目の一番端にスペースがあったので自転車を担いで入った。なんでこんなに喉が渇くんだろう?水筒が離せない。
とうとうスタートラインに立った。前列は、かなり経験豊富そうな人ばかり。この人たち、絶対に初心者じゃないな?
1分前・・・みんなの声援に余裕の表情を無理やり作って微笑んだ。本当は消えてしまいたいくらいだった。
30秒前・・・なんでこんな秒読みをするんやろ?緊張が強調されていくやんか!
10秒前・・・覚悟を決めた。とにかくスタートで前に出るんだ!!
気持ちだけは、かっこいいロードレーサーになってた。
「パン!!」
スタートの合図が鳴った。
みんながいっせいにペダルをカチカチッとはめる音がした。クリートをはめるのが最後まで苦手だった私は、なかなかはめられない。はめた人からスピードを上げていく。「待ってくれぇ~!」私もいつもよりは早くペダルをはめられてスタートした。しかし頭でイメージしていたスピードが出せない!いや?そうではなくみんなが速いんだぁ~~~!!なんとかトップについて行かなければならないのに足を回す事が全くできない。
シケインに到着。(補足:自転車レースはコースを逆走する。) 落車をすごく心配していた地点だったが、ここまでは思うようにスピードが出せていなかったので無難に通過できた。しかしなんて緩やかな坂が続くんだろう…(T_T)。習得したばかりの坂道での立ちこぎを微妙に使ってみる。でもやっぱりまだ体が思うように動かない。すぐ座ってしまう。そうこうしているうちに、どんどん抜かれていった。この時点では、きっと後ろから数えたほうが早かったと思う。
西ストレートに入った。坂道から開放され重いギアに入れて必死でこいだ。でも周りの人も速い。どうやって順位をあげていけばいいんだろう?そういえば私の師匠は上体を前傾姿勢にしてハンドルの真ん中へんを持つって言ってたな?やってみよう!・・・うわっ!ハンドルが左右にふれた。こんなんできへんわ!!素人の私には、この技はまだ早かった。怖かった私は一瞬パニック状態になった。(なんで私はレース中に練習なんかしてるねん!)
スプーンカーブ。少し気持ちに余裕が出てきた私は後ろを振り返ってみた。数人が追ってきていた。やっぱりこの時点ではビリの方だ。そう実感した。この辺りから、ビギナーWBの前でスタートした『ユース10-12B』に追いついた。 10歳から12歳の子供たちが一生懸命走っているのが目の前に見えた。心の中でがんばれ~って思いながらその子たちを抜いていった。それと同時に私もがんばらないとっていう気持ちも大きくなった。
一番落車が怖かったヘアピンカーブ。でも私はここがヘアピンカーブだったということを過ぎてから知った。かなり怖いイメージを持っていたので、それほど急カーブに感じなかったのかも。それに集団で走っていなかったから一人で慎重に曲がれた。この時点で半分来たわけだ。あと半分でこの順位から脱出しないと!
デグナーカーブ。このコーナーが意外と曲がりにくかった。よく落車があるところらしい。それを過ぎると、また坂道だ・・・。しんどい。でもこがないと…。ふと前を見ると少人数の集団がいた。この集団の前に出るんだ!そう思い、がむしゃらに立ちこぎした。この坂で何とか数人を抜いた。ここから、前を走っている速そうな人を見つけて後ろにつく作戦を試みた。なんとかこの小さな集団を抜けたかも?そうやって少しずつ順位を上げて行った。
ダンロップカーブで、ふと朝にチームメイトに聞いた言葉を思い出した。「通常、後輪のギアをトップ側に入れていったら、前のギアはアウターに入れる。」なんと私は恥ずかしいことにレースのこの日までアウターギアを使ったことがなかった。入れ方が前と後が逆なのもこの時まで知らなかった。どうりで後輪の重いギアを入れるとガイドプレートに擦れてカリカリ言うわけだ・・・。私は、前のギアチェンジを試みてみた。なんと!?うまく入らない!!どうすんの???私は逆なことを知らなかったためにとんちんかんなことをしていた。必死で触っていると フッ っとペダルが重くなった。入った!そして自転車が急に加速し始めた。
S字カーブ。この日は台風が近くまで来ているせいか、かなり突風が吹いている。自転車は何度かあおられた。その度にハンドルが取られる。「怖いよ~」せっかくスピードが上がってきたのに、ブレーキをかけそうになってしまう。徐々にスピードが上がったので前を走っていたロードをインから抜こうとした。その時また突風。芝生のギリギリまで自転車が!!落車する!!その横を救護車(?)が走っていく。これには絶対に乗るもんか!!私はなんとか持ち越した。こけずに済んだ。
最後の大きなカーブ。重いギアに変えたからか、ここで私はなんと10人近く抜いた。この私が人を抜いている!?今まで競争というもの全てをビリしか経験したことのない運動音痴な私にはこの出来事が一番信じられなかった。すごく気分がよかった。ゴール寸前でようやくレースの楽しさを実感できてきた。
最後のホームストレートだ!ただひたすらこいでこいでこぎまくった。我がチームの応援団が見えてきた。声援が飛んでくる。嬉しくなった私は、笑顔で手を振った。あ!!なんとその瞬間、2人に抜かれてしまった。くそぉ~~!!レース前は絶対に立ちこぎでゴールするぞっ思っていたのに、そんな余裕はなかった。でも、せめて差を広げたくなかった。私はなんとかその抜かしていった2人に追いつき僅差でゴールした。
感極まった。涙が込み上げてくる。でも我慢した。チームのメンバーの顔を見たら泣いてしまうかも。私は涙をこらえて歩いた。チームメイトがゴールに迎えにきてくれていた。嬉しいのに笑顔も見せることができず黙っていた。正直言って完走した喜びもあったけど最後に抜かれてしまったことが悔しかった。今まで一生懸命教えてくれた師匠にも申し訳ないと思った。明るく振舞おうとすればするほど、ひねくれた自分がいた。まだまだ根性のない自分を実感した。
結果は、54名中29位。
それまでは、チームの単なるマネージャーだった私。。。
「どんくさいマネージャーがレースに出たら、チームメイトの刺激になって活性化する」という世論に負けて出場することになったレース。
でも、この初レースは私にとって一生忘れられない思い出になった。運動音痴だと思っていた私。競争に対するトラウマ。すべてが消えた瞬間だった。
最後はけっきょく恥ずかしいくらいに泣いてしまった。チームのみんなには本当に迷惑をかけました。甘えてしまってごめんね。
おしまい。。。
—–
この2年後、同じレースで初の個人入賞をすることになりました。
それも、このレースレポートを書いて初心を忘れずに練習したからだと思うのです。
こんな私でも、一生懸命練習すれば夢を現実に変えることができたんです。
また、この初めての個人入賞のレース物語は、またいつかご紹介します。
シマノ鈴鹿ロードに初めて参戦する皆さん、最後まで諦めずに頑張って走ってくださいね!!
■シマノ鈴鹿ロードレース紹介
【開催場所】三重県(鈴鹿サーキットレーシングコース)
【距離】5,824m/1周 通常の逆回り
【高低差】52m
【ホームページ】http://www.shimano-event.jp/
ウエツキチエコ
オフィシャルホームページ
http://www.mrynasu.net/
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